チューブポンプの基礎

本記事は、チューブポンプを知らない方のために、動作原理からメリット/デメリット・用途といった基礎的な内容をわかりやすく解説します。

チューブポンプとは

チューブポンプとは、次のような動作原理に基づくポンプです。

ポンプ本体の構造は、中心部に回転部が備えつけられており、その周囲にはローラーが複数個取り付けられています。利用時には、回転部の周囲に這わすようにチューブを取り付けます。ローラーと接触している部分は、ローラーと外側の壁に挟まれるので押しつぶされた状態になります。

回転部を回転し始めると送液が開始されます。ローラーがチューブを押し潰しながら回転するので、吸い込み側には負圧が発生し、これで液体を吸い込むことができます。吸い込んだ液体はローラーの回転動作によりそのまま吐出側に送られます。この動作が繰り返されることにより連続的に送液を行うことができます。

 

このような動作原理から、日本ではチューブポンプ、またはローラーポンプと呼ばれています。海外ではPeristaltic Pump:ペリスタルティックポンプ、あるいはTubing Pump:チュービングポンプと呼ばれることが多いようです。Peristalticとは日本語で蠕動を意味し、チューブの動きからこの名前が付いたと思われます。いずれも呼び方が違うだけで同じものです。本サイトではチューブポンプで統一して記載しています。

チューブポンプのメリット

上記の動作原理から様々なメリットがあります。 

メリット

  • 連続送液が可能
  • 自吸が可能
  • 空運転に強い
  • ディスポーザブル(使い捨て)が容易
  • 定量送液がしやすい

連続送液が可能

ローラーを途切れることなく回転することで連続送液が可能なため、大量の液体を送液することに向いています。

自吸が可能

ローラーが回転する際、吸い込み側に負圧が発生することにより自吸が可能です。遠心ポンプなどで必要となる呼び水は必要ありません。

空運転に強い

空運転をしてもポンプ本体への負荷は少なく、空運転に強いという特徴があります。ただし、空運転を続けるとポンプ本体に問題はなくても、チューブ寿命が短くなってしまうため、空運転を避けた方が良いことに変わりありません。

ディスポーザブル(使い捨て)が容易

ポンプ本体は接液しておらず、チューブを交換するだけで流路を入れ替えることが可能なので、ディスポが安価かつ容易に行えます。    

定量送液がしやすい

基本的にはローラーの回転数と流量は比例関係にあり、ローラーの回転数が一定であれば、流量も一定になるため、定量送液のしやすいポンプといえます。

 

ただし、ここでいう定量送液には注意点が2つあります。    

1点目は、ローラーがチューブを押し潰しながら動作するため、徐々にチューブが劣化し、長時間経過すると流量低下が起きるということです。

2点目は、チューブポンプの動作原理上、どうしても脈動が発生してしまうことです。チューブポンプの脈動については下記の記事に詳しく解説しています。    

チューブポンプのデメリット

多くのメリットを持ちますが、もちろんデメリットも存在します。デメリットもよく理解した上で使いましょう。

デメリット

  • チューブ交換に力が必要
  • チューブからゴミが出る

チューブ交換に力が必要

チューブを交換する際、常にローラーがチューブを押し潰しているため、かなり力を入れないとチューブの取り付け・取り外しが行えません。ただし、製品によっては容易に行える工夫をしているものもあります。    

チューブからゴミが出る

ローラーがチューブを押し潰しながら動作するため、チューブの内壁が削れてゴミが出てしまいます。ゴミが出るとつまりの原因になる可能性があります。また、チューブの素材やゴミの出る頻度などによっては、ゴミが流れること自体が問題になる場合もありますので注意が必要です。

チューブポンプの用途

チューブポンプは、その特徴から様々な用途で使われています。代表的な例を下記にご紹介します。

  • プリンター
    • インクジェット
  • 理化学
    • ディスペンサー
  • 食品関係
    • 充填機
  • 医療関係
    • 再生医療機器
    • 血液透析装置

おわりに

チューブポンプについて十分ご理解いただけたでしょうか?本記事が読者の皆様の一助になれば幸いです。

その他、チューブポンプに関するご質問・ご相談があれば気軽にお問い合わせください。